ポールオースターの小説のタイトルをつけたカスタネッツのこの曲が大好きだった。
毎年春になると必ずCD引っ張り出して聴くこの曲は、新しい始まりを唄った歌だ。
引っ越して環境を変えた主人公の歌なのに
「このままで僕は進む」
と唄いきる歌詞が胸に響いた。
変わったからって何もかも変わるわけでも、何もかも変えなきゃいけないわけでもないんだと
この曲はいつも私に気付かせてくれる。
高校を卒業して実家を離れた時。
野郎だらけの学生寮を出て一人暮らしを始めた時も。
恋人と別れて一人になった時も。
そして、変わりたい今も。
横浜から本厚木へ向かう電車の中で、今日発売のJAPANを読みながらうたた寝した。
窓から差す秋の陽の光があたたかくて、酷く気持ちよかった。
眠っている間に見た淡い夢は目が醒めた瞬間に忘れてしまったけれど
目を開けた瞬間に何かが変わったような気がした。
多分私は凄く疲れていて、眠りに逃避したのだと思う。
だけど目が覚めればそこは現実で、なんにも変わっちゃいない。
それは当たり前のはずなのに、何か変わったような気がした。
疲れているな、と自覚した。
怒るのにも悲しむのにも絶望するのにも疲れた。
だけどそれと同時に覚悟みたいなものがすとんと胸に落ちた。
考える事に疲れたのは、迷っていたからだ。
だけど、疲れて眠りに逃げた先で見た夢には、確かに私が好きだと言ったものがあった。
夢に見るくらい夢を見てる自分に笑った。
そして、秋だけどこの曲を思い出した。頭の中にその瞬間確かにこの曲が響いていたんだ。
電車の中で目が覚めた時、耳の奥でカスタネッツが唄ってたフレーズは
「さかさまのリズム 受け止めて揺れる 地下鉄の中で 君の事を夢に見た」
だった。
私は変わらないかもしれないけど、このままで、私のままで変えてみようと思った。
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